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事業者名:こめはなやゲストハウス「頼母庵」

トータルで切り盛りする               「こめはなや」の暮らし

 

「自分でどうにかして生きていける場所を作ろうと思った。」と話すのは「こめはなや」として自家製食品の提供や、ゲストハウス「頼母庵」運営をする小澤 尚子さん。

「すごい忙しくなっちゃって」と話しながらも、山や畑、田んぼを中心に生きる毎日に、充実感を見出しています。都市に住んだ後、自給自足に近い生活に立ち返った小澤さんに「こめはなや」のこだわりや、暮らし方のテーマなどを聞きました。

 

 

こだわりの自家製、お菓子とごはんを提供

 

「ゲストハウスの下にも畑がありますし、少し離れた場所に田んぼと畑が2枚ずつあります。昨日も、真っ暗になるまで畑にいましたね。」

自分で食べる米と野菜は、自分で育てる小澤さん。味噌と醤油も、自作の米や小麦から発酵させた麹からできています。

「2000年からずっと有機農法をしてきましたが、肥料に頼らない自然農法に5年前に切り替えました。土が変わるまで10年かかると言われていますので、まだまだ試行錯誤中です。

一方で、田んぼの方は、もういい感じ。これからどんどん変わっていくって言われています。なんだか、キラキラなんですよ。土が正常な感じがするんです。収量は減ったけど、おいしくて感動しますね。もうやめられない。」

2009年4月から2019年の5月までは “農家のお菓子とごはんを食べられる”コンセプトの『こめはなや』というお店を運営。人間は生物と一緒に生きていること、生物がいるから人間は生きられることを、食を通じて伝えてきました。現在は飲食店としての営業は終えましたが、朝市やマルシェで、お菓子やごはんの提供をしています。

購入できるのは、月1回、土曜日の朝9時〜12時の『こめはなや』で開かれる朝市。開催日はHPやSNSでも、お伝えしています。それから第4金曜日に『信毎メディアガーデン』の『マルクト』。隔週水曜日の朝11時〜『北小野公民館(北小野地区センター)』で開かれる『たのめ水曜市』です。

「『たのめ水曜市』では、スーパーがなくて困っている、地元の買い物弱者の方に楽しんでもらえたらいいなってことで、なるべくお弁当やお惣菜に力を入れています。」

 

 

信頼している農家から調達した素材を使用。添加物は使わないなど、こだわりがあふれる商品ばかりです。また、梅酢や醤油などの調味料も手作りしています。

大福に使われる餅米は、半世紀以上、品種改良されていない貴重な品種の『明神餅』。農家さんに種を渡して、無農薬で育ててもらっています。『草もち』には、近くの休耕田で摘んできた、よもぎがたっぷり入ります。

 

 

初夏には、木曽の名産品の「朴葉巻(ほおばまき)」、夏には「トマトもち」を販売。「トマトもち」は、トマトを煮詰めて水気を飛ばしたものを、餅と一緒にこねています。ピンク色になった餅のなかに、クリームチーズが入った絶品なんだそう。さらに、秋には「エゴマもち」。冬は白インゲンを白あんにしたものと、鬼柚子の甘煮をいれた「ゆずもち」を楽しめます。

「どれもアイディアが浮かんで作ってみたら、おいしかったんです。朝市には、楽しみにしてくれるファンがいるので、嬉しいですね。」

 

 

 

嘘っぽくない最初から最後まで自分の暮らし

 

実家は小野地区。高校卒業後は、大阪で歯科技工士の資格を取得しました。歯科技工士として働きつつも、このままでいいのかと思い悩み、インドとネパールへと旅立ちます。現地でさまざまな人生観に出会ったことから、インド哲学に興味を持ちました。日本に帰ってからは、インド哲学の師匠が経営する、熊本県にある自然食レストランで働きながら勉学を進めますが、やがて小澤さんがレストランを切り盛りするようになります。しかし、2000年になる寸前に小野のへとUターンしました。

「熊本県には10年いましたが『2000年問題』ってあったでしょう?その時に、都市で生きていくことに不安を覚えて、こちらに帰ってきたんです。」

『2000年問題』とは、西暦2000年になると、コンピュータが誤作動する可能性があるとされた問題。金融や流通、製造、通信など、あらゆる業界でシステムが誤動作したり、停止したりするなどの問題が起こると指摘されていました。

「『2000年問題』が取り沙汰された時、電気が止まったら水も飲めない、トイレもできないようなところでは、もう暮らしたくないと思いました。でも、小野だったら、水は取りに行けばいいし、トイレは穴を掘ればいい。お米や野菜も、自分で育てればいい。確かに都市にいたら便利かもしれないけど、都市の暮らしは嘘っぽいと感じたんです。」

 

 

実家は兼業農家で、米や小麦、鯉、鶏なども家で育ててきたという小澤さん。養蜂でハチミツもとれました。子どもの頃に食べたおやつ「薄焼き」も、家で採れた卵と小麦粉、ヤギの乳を入れて焼いて、自家製ハチミツを塗っていた思い出があります。

「ちゃんと暮らしたいなって思いました。仕事があって、自分の生活があるんじゃなくて、仕事自体が自分の暮らしのような感じ。部分的ではなく、歯車ではなく、トータルに生きたいのよね。ちゃんと土の上で暮らして、最初から最後まで自分の暮らしをしたいなと思いました。」

さらに、原理を追求するインド哲学を勉強してから、小澤さんは「自分は山から来た者だ」と実感したのだそう。

「私にとっての神様はなにか、ずっと考えていたんですが、おそらく自然が神様なんです。山がとっても好き。なるべく自然を守る活動をして、農業でもなるべく土を傷めない方法をとっているつもりです。」

 

 

 

■地を生かして、何でもできるような施設に

 

農産加工の店を営むことを目指して、有機農家をスタート。2008年には、実家の畑に農産加工場を建てました。

しかし、加工品の配送や、売れ残りなどを考えると、農産加工業は現実的ではないことが分かりました。そこで2009年にスタートしたのが飲食店『こめはなや』です。

「そこから、飲食業もできる、菓子・弁当製造もできる、宿泊業もできる場所を目指しました。とりあえず、いろいろできるようにしたい。その時やれることで、なんとかお金にしていければいいなと思いました。」

ゲストハウス『頼母庵』は2017年にオープン。物置だった建物を、少しずつリノベーションしました。

 

 

「みんなに手伝ってもらいながら、時間をかけて、ちょこちょこ直しました。トイレや土間の簡易的キッチン、シャワーもつけてね。古民家のように味のあるしつらえです。」

 

 

 

自然を傷めない里山の手入れに貢献

 

小澤さんは、地域の蝶をはじめとする、生物多様性を守る活動団体「にれ沢蝶の森」の代表をしています。「にれ沢蝶の森」では、里山の手入れをおこなうほか、講師をお呼びしてワークショップもおこなっています。

「『にれ沢蝶の森』ができたきっかけは、メガソーラーの計画が持ち上がったこと。うちの田んぼの上流なんですけれど。動植物がつながり合い、豊かに生きられる環境を壊したくなかった。工事が始まったら絶対に後悔すると思って、反対運動を始めました。」

計画が持ち込まれたのは、もともと農地であったものの、荒れてしまった土地。2haにもわたるメガソーラー設備でした。

「山主さんたちには『私が手入れしますから、メガソーラーのために売らないでください』とお願いして回りました。結果、山主さんたちには売却をやめてもらえたんです。『こめはなや』としてお店をやっていたことで、私にどのような思いがあるのか、受け入れてもらいやすかった気がします。」

それから3年間、里山の手入れを続けてきました。誰でも参加できる里山の手入れ。里山を愛する方々が集まっています。

 

 

 

■自分で舵を切っていく人生観を伝えたい

 

熊本にいた時から、人生のテーマのひとつが「自立」だったという小澤さん。

「インド哲学の師匠には、いつも『社会から出ろ』と言われていました。もちろん社会に関わらないと生きていけませんが、社会に依存しすぎると、自分主体では動けませんよね。自分の思いとは合わないこともやらなきゃいけないし、やらされていくのは苦しくなってしまいます。

組織の中にいた方が、力を出せる人もいるので、そこから必ず出ろということではありません。組織の中にいても、やっぱり自分で開拓していく力は持っていたほうがいいのではないかと思います。」

今後、小澤さんが取り組みたいのは、自分で自立して営んできた暮らしを、周囲に伝えていくこと。そのための仕掛けを考えています。

「今は、お菓子やごはんを作っているだけで気楽。今後は、その気楽なところから、一歩踏み出すことが必要だと感じています。歳を取ったら、病気したら、もうそれでおしまいになってしまいますから。

田んぼや畑で野菜を一緒につくって、一緒にごはんをつくりながら宿泊してもらうストーリーも、いいのかもしれませんね。そんな暮らしのなかで、いくらかはお金にしていかないと暮らしは回っていきませんから、どうやってそれをお金にするのか、考えてみる機会をつくるのも大事かもしれません。」

「私みたいな生き方は、絶滅危惧種だよねって言われます。」と小澤さん。山の中で、暮らしを自らの手で切り盛りする小澤さんの生き方に、共感する人たちが集うことでしょう。

 

 

 

 

  • 会社情報
  • 会社情報
    事業者名こめはなやゲストハウス「頼母庵」
    所在地〒399-0601 長野県上伊那郡辰野町小野960
    電話番号0266-46-3022
    FAX0266-43-2075
    E-mailoznaoko@gmail.com
    URLkomehanaya.com/
    設立年月日2009年4月12日(こめはなや)  2017年9月20日(ゲストハウス「頼母庵」)
    代表者名小澤 尚子
    全従業員数1人(女性 1人)
    主な業種サービス業
    事業内容民泊(素泊まり)
    できるときは朝食を用意することもあります
会社情報
事業者名こめはなやゲストハウス「頼母庵」
所在地〒399-0601 長野県上伊那郡辰野町小野960
電話番号0266-46-3022
FAX0266-43-2075
E-mailoznaoko@gmail.com
URLkomehanaya.com/
設立年月日2009年4月12日(こめはなや)  2017年9月20日(ゲストハウス「頼母庵」)
代表者名小澤 尚子
全従業員数1人(女性 1人)
主な業種サービス業
事業内容民泊(素泊まり)
できるときは朝食を用意することもあります
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