ものづくりの大切さ

“創意と工夫を結集して新たな時代を築こう” これをコーポレートスローガンとして掲げているのは伊北インターから車で数分の場所にある㈱上野精機長野。

私たちが普段何気なく使っている身の回りのさまざまな製品。

例えばテレビやDVDプレーヤーといったAV機器。 カーナビ、パソコン、洗濯機やエアコン。 自動販売機や電車、銀行ATMといったインフラ。 今では約5割以上の人が使用しているスマートフォンやタブレット端末。

多くの製品に使われる電子部品の電気特性試験、リードの形状や寸法など 信頼性試験を行う高度な機能を持つ装置を開発製造。

「世の中にないものを一から作り出すことはとんでもないこと。でも、その世の中にないものを開発して起動した瞬間の感動ってのは素晴らしいよね。」

今回お話を聞いたのは取締役の宮原さん。

現在の仕事に行き着くまでは波瀾万丈だったよ、と話してくれた。 ご自身がエンジニア出身だから、それ以外の仕事はつまらなく感じてしまい、 やっぱり自分にはこれなんだよ。と、今の仕事を始めて約33年。

本格的なお話をする前に工場の中をみせてくれることに。

最初に案内してくれたのは製造部。 大きな機械が何台も設置。

しかし扱っている物自体はとても小さく繊細な物ばかり。

こんな小さな部品がひとつでも欠けていたら 製品が使えない

素直にすごい！

私たちの生活に欠かせない製品はたくさんの行程を経て ようやく世の中に出回り、私たちの手元に届いているんですね。

宮原さんに仕事の楽しさをお聞きしました。

「やっぱり自分たちが世の中にないものを作っているのは楽しいよね。」

誇りを持って仕事をしていて 楽しいって言えることはなんだかとても魅力的です。

「ただ、経営者の方はみんな感じていると思うけど、受注がくるとやっぱりうれしいです。うれしいですが、その一瞬だけなんですよね(笑)。内心“本当にできるのか…？”って思ってしまうんです。」

結構無理な受注も多いんですね。

お断りはしないんでしょうか。

「うちの会社を見つけて、選んでくれている。または昔からの付き合い、そんな風に思ったら断れませんよ。そんなしがらみも大切だと思います。」

過去、この金額でこの仕様、この納期だとどうしても出来ないと思い、渋々お断りに行かれた宮原さん。

結果、「全部そっちの意見をのむからやってくれ」と言われてしまい、会社に戻り「断りに行ったんじゃないんですか！？」って。結局断れなかった経験もあったそうです。

宮原さんの人柄、機械への安心感。

すべてにおいて信頼があるんですね。

会社の強みはどんなところでしょうか。

「社員の技術力ですね。だから完成度が高いです。お客さんは他社より高くてもうちがいいと言ってくれます。理由は安くても結局完成度が低くて不具合が生じて修理ばかりだと、結果的に高くつきますよ。うちは納品した機械は次の日からすぐ生産可能なくらい完成度には自信があるから、名指しをしていただけているんだと思います。」

実際、専門職となれば限られた人材ってことになりますよね。

「業種によってはあれもこれも出来る、オールマイティな人は重宝されやすいですよね。でも機械と電気を両方極めろって言ったところで両方簡単ではないから、浅い知識になっちゃうと思うんです。お客様にとって魅力ある商品にするためには深いところまでの知識が大切です。」

経験も大切かもしれないが、若い子のいいところは 頭の柔軟さ。

吸収の早さ。

なるほど。

何歳までが若くて、柔軟と思ってもらえるのか…

社員さんは楽しそうに仕事していますね。

「一度怒鳴りつけてみたいけど、勇気がなくて(笑)。

気づいたらこの歳になっちゃったんだよ。

ってのは冗談で、私と社員の間に壁をつくる必要はないと思っているので。威圧感を与えるメリットって何の意味もないですよね。」

社員さんには結構言いたい事を言われるという宮原さん。

「確かに私は経験上、多くの引き出しを持っていますが、最近はその引き出しも錆び付き出していて(笑)古い固定概念よりも若い子たちの、“ああしたい”“こうしたい”を聞いています。その中でも間違っている事があったら指摘はしています。」

「技術の世界は算数と一緒で、答えがあるんです。そこに導くのが私の仕事なんです。」

自然豊かな辰野町で世の中にないものを生み出すエンジニア。今後また、どのような物がうまれてくるのか楽しみです。