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事業者名:有限会社 豊花園

こだわりは、環境の変化に応じた土づくりから

「強くて丈夫、そして通常の種を蒔くよりも早く咲くのがうちの種の特徴です。

自社で栽培した花の中でも、早く咲いた花の種を自分で選別するんです。そのことにより、この周辺や関東一円の中でも一番に早く花を咲かせると思いますよ」

 

 

そう語るのは、豊花園のオーナー中谷 豊さん。

「また、土づくりは、ウチのこだわりのひとつです。土づくりの行きつく先は、人間と同じです。人が食事からたくさんの栄養を摂った方が健康でいられる。植物も同じなんです。何もかも色んな栄養が入った土をつくってあげる。これが、土のベースになります」

「ただ花によって好む土は違いますから、肥料の加減を変えたり配合を変えたりして、10~20種類くらいの土をブレンドし花の種類に分けて土づくりをします」

 

 

最近土づくりで悟ったことがあるといいます。

「この土づくりは絶対にいい方法だって思いました。それは、今年の気候にあった土をつくることです。これは真似して作ろうと思ってもなかなか出来ないことだと思っています」

土を作るのは4~5月。

6~9月くらいまでの気候を先読みして土を作るのだそうです。

「自分で土づくりをしていると、自然と変化に応じた土づくりが出来るようになるんです。この品種にはこの配合など、固定観念をもって土づくりをするかと思いますが、気候を先読みして土の配合を変えて栽培管理することが今の時代には必要なことだと感じます」

 

 

これは、絶対に真似ができないと自信たっぷりに語られます。

長い年月、土に触れ、敏感に気候の変化を感じ取りながら土つくりをしてきた中谷さんの強いこだわりと熱意がひしひしと伝わって来ます。

積み重ねてきた経験と先見の明に裏打ちされた匠の技が、この土づくりに活かされています。

ホームセンターなどで売られている土と、豊花園で作られた土では、花の育ち方が全然違うと、お客様にも評判なのだそうです。

「まず、ホームセンターなどで売られている土は、その土地で作られた土じゃないですよね。それは、その土が作られた土地の環境の中で試験された土なんです。皆さん、日本各地方々へ行って土づくりについて教わり、その土を持って帰ってあれこれと試したりするんですが、その土はそこの環境に適した土なんです。花を栽培しているその土地に合った土という訳ではないんです」

 

 

この品種にはこの配合といった一般的な考え方や、評判の良い土だからと、気候や風土が違う土地から持って来ることは、花を栽培する上で必ずしも良い結果をもたらさないといいます。

「土づくりのアドバイスをよく求められるのですが、豊花園ではこの土地の風土、環境に適した土づくりをしているから花は良く育つんだよ。自分の所で土づくりをする時には、自分の所の環境や風土を考慮して土づくりをしてみるといいよって」

花は、土が良いとよく育つといいます。

それでも、ある年に作った土がとても良い出来だったとしても、翌年には合わないなんてこともよくあるといいます。

「環境の変化をしっかりと観察して先読みした土づくりをしていかないと、その年に適した土は作れません」

 

 

「例えば、今育てているプリムラ(サクラソウ)などは、夏場に病気になったりおかしくなったりする事は、ほとんどなかったんです」

「種子でもって、早く咲く品種を作っていたものですから、9月下旬から10月には花が咲くもんだと思っていましたが、今その時期に花を咲かせることがとても難しくなってるんです。明らかに気候が変化しています。そうした気候の変化なども考慮して土づくりをしていかなくちゃならないんです」

夜の気温が25~30度を超える日が続く様になると、いったん出た花芽が、なくなってしまうといいます。

「この仕事をする上で、大きな誤算だったのは地球温暖化です。これは考えもしなかったことです。30年前の長野県と今とじゃ、かなり温度が違います。30年前には高冷地だった長野県も、今では準高冷地になりました。そうした気候の変化に応じて毎年配合を変えながら土づくりをしていくのは本当に大変です」

 

 

「プリムラ(サクラソウ)の花は、30度を超える日が続くと花芽の分化(発芽後、葉や茎を大きく成長させ、やがて生殖のために花になる芽を作るようになることを《花芽分化》という)しなくなるんですがそうした植物がうんと多くなりました」

長年、花に携わっていることから、

温暖化による環境の変化においても観察力がついたといいます。

「この辺りでも蔓の植物が多くなっているのが見て取れますが、15年程前には、見られなかった光景です。曼珠沙華は、球根植物なので長野県の冬では凍って越冬しなかったんです。-15度くらいで凍ってダメになってしまうハズの曼珠沙華が繁殖しているのも温暖化によるものだと見て取れます。こうした気候の変化に応じて土づくりをしてる訳です」

そうした取り組みから安定した花つくりが出来、

土もよく売れ、安定した収益につながっているそうです。

種もまた自社で採集したものにこだわっているとのこと。

「豊花園でつくった種は、豊花園独自の種です。全国どこへ行っても、同じものはありません。種はとっても高いんです。1リットルにも満たない量で、うん百万という金額になるんです。いまやっているプリムラの種は、市場だと一粒が5円~6円します。それを自社で採集する際、苗の段階から自分の目で選別してゆけますから、良い種が取れる上にコストダウンにもつながる訳です」

 

 

豊花園でしか取り扱っていない品種では、約15社で取引され、栽培されたものでは苗が30万。生花が10万本、年間に出荷されます。

写真は、愛知県から来られた取引先の園芸店店主。

豊花園とは、父親の代からの長いお付き合いとか。

 

 

豊花園のスタッフの方々は、みなさん元気いっぱいです。

その元気の元は、やはり植物を相手に仕事をしているからといわれます。

「植物は、正直。愛情をかけた分、応えてくれますから」と話してくれました。

 

 

「外でこうして仕事をするのは、気持ちがいいですね」と話してくれたこちらのスタッフは、この仕事をはじめて、まだ1ヶ月。

この時の作業は、出荷に伴う苗の手入れ。一鉢一鉢、丁寧に行われます。

 

 

こうして手入れされた苗を軽トラックに積み、出荷の準備がなされます。

 

 

1日の作業の3分の1は、こうした灌水(水やり)の作業になるといいます。

前後リズミカルに、まんべんなく水やりをします。

 

豊花園オーナーの中谷 豊さん。

この仕事を始められるきっかけはなんだったのでしょう。

「今の若者たちの悩みと同じで、自分は何の仕事をするべきか悩んだんです。今から40~45年くらい前、最初は普通の会社に勤めてたんです。そこで3年くらい勤めて、4年目に入る頃のことですが、その頃、俺はこれで本当にいいのかな?と、仕事に疑問を持ちだしたんです。俺は、これでいいのかな、自分には何が向いているのかなと考えました」

 

 

それで、日本全国を旅して回ったといいます。

長野県の標高と地形を念頭に入れると、いくら高速道路などが出来ても大きく景観が変わらないだろうと感じたといいます。

長野県は高冷地なので、花の栽培に向いている。

そのことに気付き、花の栽培の仕事をしてみようと思ったのだそうです。

その発想は大正解だったといいます。

 

 

「最初は、生産直売所をつくりたいと思ってやり始めました。花の需要は、3、4、5、6月。夏の7月から需要が、ガクンと無くなるんです。忙しい時と仕事がない時のギャップが大きいんです。3月~6月は、生花店として運営して、5月頃に種を蒔いて、夏場は生産するものをつくって、秋口には市場へ出荷する。そのローテーションでもって仕事を回すのですが、私は直売よりも生産の方がずっと面白くなっちゃっいました」

「それはね、やっぱり花と話が出来なくちゃダメなんですよ!植物自身が何を望んでいるか?それが分かるようじゃないとこの仕事はつとまりません。だけど、花と話が出来るようになるまでは、30年~40年とかかります」

 

 

「シクラメンをつくってる友達は、シクラメンの葉を30~40枚見れば、その人がどんな育て方をしていたかすぐに分かると言います。それがプロだよね!!残念なんだけどね、同じシクラメンを見ても、僕は彼ほどには分からないんです。どんなに栽培した花の良さを説明したところで、本当に良い物かどうかはみんな花が物語っているんです」

 

 

こうした取材を重ねる中で思うのは、それぞれの世界で長く働いていると、その仕事を通して見えてくる世界観というものを皆さんお持ちです。

例えば、豊花園さんでは植物を相手に仕事をしているからこそ、温暖化などの環境の変化を肌身に感じたりする。また、愛情をかけて花の声に応じて栽培をしていれば植物はキチンとそれに応えてくれる訳ですね?

「決められた器(面積)の中で、その環境の変化に影響されながら花つくりや土づくりをする。試行錯誤しながら、工夫しながらですからね。難しい仕事です。それでもこの仕事は、本当に楽しくてね。出来れば後100年ぐらいこの仕事させてもらいたいね。そのくらいやらないと、この仕事は極められないよなって思います」

 

  • 会社情報
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    事業者名有限会社 豊花園
    所在地〒399-0425 長野県上伊那郡辰野町樋口2426-1
    電話番号0266-43-1035
    FAX0266-41-4787
    全従業員数6人(うち女性6人)
    主な業種卸小売業
    事業内容花苗、鉢、生産販売及び稲苗委託生産
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事業内容花苗、鉢、生産販売及び稲苗委託生産
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